2020.04.14
遺言の重要性①【嫁・姑問題の果てに】
ここのところ、いつ何時、どのようなことが起こるかわからない、本当にそんなご時世になってしまったと思いませんか。そんなときこそ、いざという時の備えをちゃんとしておく必要があります。その、いざという時の備えの一つとして、何回かに分けて、遺言の大事さについてお話したいと思います。
みなさんは、遺言ついてどのようなイメージを持たれているでしょうか。大げさだ、うちは揉めないから必要ない、そんなふうに思っている方が大半なのではないでしょうか。でも、弁護士として、多くの相続にまつわる揉め事を見ていると、遺言を作るだけで揉めなかったのに、と思うことがたくさんあります。そんなケースをご紹介することで、遺言の大事さを分かってもらいたいと思います。
【ケース ①】
Aさんは、妻であるBさん、AさんとBさんの唯一の子であるCさん、Cさんの妻であるDさんと、Aさん名義の家で一緒に住んでいました。
Aさんは、「自分には、先祖代々の土地と、そこに建てた家、あとは少しの預貯金くらいしか財産がないし、どうせ一人っ子のCが家を継ぐんだから、相続のことなんか考える必要がない。」と思っていました。
そのまま、Aさんは亡くなってしまいました。
Cさんも、生前のAさんと同じように、「自分が家を継ぐんだ。」と思っていたことから、遺産分割をするにあたって、Bさんに対し、「父さん(A)の財産は、いったん母さん(Bさん)がもらったとしても、母さん(B)が亡くなったときには、結局は俺のものになるんだから、俺がもらうってことでいいよね。」と言いました。
Bさんは、「それでは自分には何も残らない。」と思ったことから、少しためらったものの、Cさんから、「今後も面倒みてあげるから、それくらいいいじゃない。」と言われてしまったことから、まあいいか、と思い応じることにしました。
こうして、Aの財産はすべてCさんの名義になったわけですが、その後になって、DさんのBさんに対する不満が爆発してしまいます。Dさんいわく、「私はずっとBのいびりに耐えてきた。けど、もう限界。なんでこんな人と一緒に暮らして、終わりの見えない介護をしなきゃいけないの。私はCの妻だけど、Bとはしょせん他人。」と。
このことを知ったBは激怒し、Dさんに対し、「お前みたいな奴は、家を出ていけ!」と言い放ちますが、Dからこのことを聞いたCに、「この家は俺の家だからDが出ていく必要はない。むしろ出ていくのは母さん(B)だ。」と言われ、家を追い出されてしまいました。
高齢のBは、「これからどうしたらいいのか。」と、途方にくれてしまいました 。
【解説】
この例は極端かもしれませんし、遺産分割のときに、Bが、家は絶対に自分のものにするんだ!と強く主張すれば、このような結果にもならなかったのかもしれません。でも、老後のことはとても気になるので、Bさんも、なかなか強く言えなかったのかもしれませんね。
そこで、そのようなことにまで気を配って、Aさんが、「家と土地はBに相続させ、残りの財産はすべてCに相続させる。」という内容の遺言を作ってあげれば、少なくともBが家を追い出される可能性はぐっと低くなります。本当にそれで大丈夫なのかは、もう少しちゃんとAさんの財産状況を検討する必要があるのですが。
このように、うちは全く揉めるようなことはないから大丈夫、と思っている方でも、揉め事をたくさん経験している弁護士であるからこそ見つけられるような落とし穴があるかもしれません。
こんなことで相談していいのかな、とか思う必要は全くありませんので、お気軽にお問い合わせください。