2020.06.23
「自己破産」するとどうなるの?~そのデメリット~
「自己破産」の手続きをとると、社会生活や経済活動にどのような影響が生じるのか、疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。 中には、自己破産をするととんでもない不利益が生じてしまうという誤った認識をお持ちの方もおられるかもしれません。 今回は、自己破産をした場合の、デメリットを中心にお話します。
大まかにいえば、以下に挙げる点が自己破産をした人(破産者)の受ける不利益となります。
1)官報に掲載されます
官報というのは、政府の発行する広報誌です。破産をすると、この官報に住所氏名が掲載されます。ただし、一般の新聞とは違って普通の書店には置いてありませんので、一般の人が目にすることは少ないと言えます。
2)公法上の資格制限があります
破産者になると弁護士、公認会計士、司法書士、税理士などの資格所有者は資格停止になり業務をすることができなくなります。
3)私法上の資格制限があります
破産者は後見人、遺言執行者などになることができません。また、株式会社、有限会社の取締役、監査役については退任事由になってしまいます。
4)ローンやクレジットを利用することができなくなります(借金ができなくなります)
自己破産をすると、信用情報機関にその情報が記録されるため(いわゆるブラックリスト)、破産後一定期間は、借入などができなくなります。信用情報機関によって違いはありますが、5年~10年間は、破産歴が残ります。
5)破産者名簿に記録されます
破産者名簿というのは、本籍地のある市町村の役所で管理されている「破産者」の名簿のことです。ただし、それに載るのは、自己破産手続きで免責許可(借金をチャラにするという許可)を得られなかった人だけですので、9割以上の人には関係がありません。また、この破産者名簿は一般に公開されないものなので、一般人や企業が閲覧することはできません。唯一、「身分証明書」(その人が「破産者ではないこと」を国が証明する公的な書類)を発行する際に、利用されるにとどまります。
なお、破産管財人事件(裁判所から選任された弁護士が、破産者の財産の整理や債権者への分配を行う方式の手続)については、更に制約がありますが、この点は、破産管財手続についてお話する際に、改めてご説明させていただきます。
これに対して、自己破産のデメリットとして誤解されている事項もあります。例えば、戸籍謄本や住民票には破産をした事実は記載されませんし、勤め先の会社は破産したことを理由に解雇することはできません。また、選挙権や被選挙権などの公民権が停止されることもありません。
以上、自己破産のデメリットをお話しましたが、正確な理解をもって、破産手続へと進むかどうかを検討していただければ幸いです。自己破産は、一般にイメージされているほど、デメリットばかりの手続きではありません。