2020.05.29
両親が亡くなった後にすべきこと
1 はじめに
両親が亡くなった後に、いつまでに、なにをしなければならないのか。
そうそう経験なんてあるはずがなく、よくわからない方が大半だと思います。そこで、今回は、そのご説明をしたいと思います。
なお、お役所関係の手続については、私の専門でもないですし、今回は触れません。
2 両親が亡くなった直後のこと
誰かが亡くなると、すぐに口座が凍結されてしまう!お金が下せない!大変!という話をよく聞くかと思います。ただ、若干誤解があるかもしれません。
まず、誰かが亡くなり、役所に死亡届を出したとしても、役所は、銀行などに連絡をするわけではありません。 そのため、銀行は、たいていの場合、誰かが亡くなっても、そのことを知りません。亡くなった方の相続人が、「親が亡くなったので、解約の手続をしたいんですが。」と相談があったときに、亡くなった事実を知ります。口座凍結の手続も、そのときに行うわけです。
たまに、田舎の方だと、新聞の死亡広告を見たり、噂話が回ったりすることで、銀行が亡くなったことを知って、勝手に口座凍結されることもあるみたいですが、例外です。
いずれにしても、口座凍結がされるまでは、やろうと思えば、ATMからバンバンお金を引き出すこともできちゃうわけです。逆にいうと、ほかの相続人がお金を持っていってしまいそうだ、という場合は、すぐに銀行に連絡して、口座を凍結しなければなりません。
なお、口座が凍結されてしまっても、銀行から一部の預金を仮に払い戻してもらうことが可能です。お金が必要なのに口座が凍結されて困ってる!というときは、慌てずに一度ご相談ください。
3 ご両親が亡くなってから3か月以内に考えること
ご両親に借金があったり、借金があるかどうかわからないときに、家庭裁判所で相続放棄や限定承認をするのか、普通に相続をするのか。ご両親が亡くなったのを知ってから3か月以内に決め、行動しなければなりません。
なお、相続放棄がどういうものかについては、結構、誤解されている方が多いような印象なので、また別の機会に詳しく説明します。
ちなみに、「そんな短時間では決められないよ!」という人は、その期間を延長するために、家庭裁判所に、「期間の延長をお願いします!」という申立てができます。まずは3か月の延長となるのが通常です。
4 ご両親が亡くなってから4か月以内にしなければならないこと
ご両親に家賃収入があるなどして、毎年確定申告をしていたような人だと、亡くなる日までの所得をもとに、準確定申告をしなければならない可能性が高いです。
その期限は、被相続人が亡くなってから4か月以内とされているので、注意が必要です。
5 ご両親が亡くなってから10か月以内にしなければならないこと
ご両親の財産の金額によっては、相続税申告が必要です。その期限は10か月です。
今回は、細かい話はしませんが、財産の金額が3600万円を超えるようだと、場合によっては相続税がかかる可能性があります。税理士等への相談をご検討ください。
なお、ご両親が亡くなってから10か月経っても、まだ、どのように遺産を分けるかが決まっていないというケースもあるかと思います。でも、そのようなケースでも、10か月という期限を延長してもらえるわけではなく、相続税申告をしなければなりません。ご注意ください。
6 遺言について
ご両親が遺言を残していた場合、それが手書きの遺言なのであれば、家庭裁判所で検認という手続をする必要があります。
検認の申立てをすると、相続人全員に、家庭裁判所からお知らせが届きます。そのため、遺言があることを知らなかった相続人は、これによって、その存在を知ることができます。
他方、公正証書で遺言を作っていた場合には、検認は不要です。
ただ、検認が不要ということは、遺言があることを知らない相続人は、その存在を知らせてもらえないということになります。その代わり、公正役場に問い合わせることで、遺言書があるかないかを確認することができます。
そして、遺言書がある場合には、たくさんの例外はあるものの、基本的には、その遺言書どおりに遺産をわけていくことになります。
7 遺産分割協議
遺言がない場合には、相続人全員で遺産をどう分けるか、話し合いをしなければなりません。
この話し合いは、多数決では決まらず、全員が納得する必要があります。逆にいえば、一人でも納得できないようなら話し合いは終わりません。なんとか話をつけるために、弁護士に依頼したり、家庭裁判所での調停なども検討しなければならないかもしれませんね。
そのため、揉め事の中でも、遺産分割というのは、解決までに時間がかかる可能性が高いのです。
8 最後に
ここまで、両親が亡くなられた場合に、いつまでに、なにをしなければならないのかを述べてきました。
でも、家庭裁判所や税務署、公証役場など、普段の生活を送る上ではあまり縁のないところが多く出てきたかと思います。本当に自分で対応できるかなと思われたりしたときは、ぜひ一度ご相談いただければと思います。