せいわ法律事務所

法律コラム

2020.04.16

遺留分の基礎① (遺留分とは、遺留分を請求できるのは誰か)

玉垣 正一郎

遺言の話をするにあたって避けて通れないのが、「遺留分」の制度です。実際、遺言のケース紹介をしているときにも、たびたび遺留分という単語が出てきたかと思います。そこで、今回は、その遺留分の基礎的なところについてご紹介します。

1 遺留分とは

遺留分とは、一定の相続人に、一定の遺産を確保するための制度、だと思ってもらえればと思います。

被相続人が亡くなった場合、その遺産は、法定相続分に従って分配されるというのが相続の基本です。もっとも、被相続人は、生前に、遺言を作成したり、贈与をすることで、自分の財産を、法定相続分で定められた割合とは関係なく分配することができてしまいます。

たとえば、被相続人が、「長男にすべての財産を相続させる。」という遺言を作っていた場合には、本来は長男と同じだけの財産を取得できたはずの他のきょうだいは、何も取得できません。また、被相続人が、生前に、すべての財産を長男に贈与していた場合には、遺産はなにも残っていないことから、他のきょうだいは、同じく何も取得できないことになってしまいます。

そのようなときのために、遺留分の制度が用意されているのです。

2 遺留分は自動的に得られるわけではないこと

ただし、遺留分は、自動的に発生する権利ではありません。遺産をもらいすぎている、または、たくさんの生前贈与を受けている人に対し、きちんとした形で請求をしなければ得ることができないものなのです。

しかも、請求ができる期間には限りがあります。簡単にいうと、自分が遺留分を請求できることを知ってから1年間です(詳しくはまた別に説明します。)。悠長に構えていると、1年なんかはあっという間に過ぎてしまいます。これが、今回のお話の中で最も重要な点なので、このことだけでも覚えておいてもらえればと思います。

3 遺留分を請求できる人

先ほど、遺留分は、「一定の」相続人に、一定の遺産を確保するための制度であると説明したように、すべての相続人が遺留分を請求できるわけではありません。

では、誰が請求できるか、ですが、端的にいうと、兄弟姉妹以外の法定相続人ということになります。これは、状況によって異なることから、以下で説明します。

まず、被相続人に子がいる場合、法定相続人は、(ご存命ならば)被相続人の配偶者と、子、ということになります。仮に、子が亡くなっていても、孫がいる場合には、その孫も法定相続人です。同様に、孫が亡くなっていても、ひ孫がいる場合には、ひ孫が法定相続人になります。

この場合は、その全員に、遺留分を請求する権利があります。

次に、被相続人に子がいないものの、父母がご存命、または、父母が亡くなっていても、祖父母がご存命のときは、その法定相続人は、(ご存命ならば)被相続人の配偶者と、父母、父母が亡くなっているときは、祖父母、ということになります。

この場合も、その全員に、遺留分を請求する権利があります。さらに、被相続人には子がおらず、父母や祖父母も既に亡くなっている、ただし、兄弟姉妹が存在する、という場合には、その法定相続人は、(ご存命ならば)被相続人の配偶者と、その兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっているときは甥姪)となります。この場合、遺留分を請求できる権利があるのは配偶者のみで、兄弟姉妹や甥姪には遺留分を請求する権利はありません。

4 最後に

少し長くなったので、今回はここまでにしておきます。どのような場合に、どれだけの遺留分を請求できるのか、などについては、また別にご説明します。

遺留分の制度は複雑で、検討すべき事項も多いことから、本来ならば得られるはずのものが知らないまま放置されているということも十分考えられます。そのため、これは不平等なんじゃないか、と思ったという程度でも全く構いませんので、まずは一度ご相談ください。

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